「学問の技法」橋本努/ちくま新書

多くの学生がレポートや論文の書き方がわからず、最終的にまとめ勉強程度の卒論を書いて、大学を卒業していく。その一方で、何も教えなくてもすぐに「学問」に取り組める学生がいる。これには生活資本の格差の影響が大きい。上流層は高い生活資本にともなって知的生活資本も高く、その子弟は自然に学びの姿勢と、学びの技法を身につけている。だが下層、中間層の子弟はそうではない。この本はそのような学びに悩まざるを得ない学生のために書かれた。

もとより技法が目的なのではない。技法は「はやく抜け出るべき段階」であり、すべての技法を無意識化して学問することが目標である。だが、すべての人に通用する技法があるわけではない。究極のところ各人はそれぞれ自分なりのやり方を会得しなければならない。先人たちの技法は言わば「社会資本」。それを共有することから一歩を踏み出してみよう、というのがこの本。大学で学ぶためのコツ(技法)が、事細かに書かれている。「大学生のための」という副題をつけるべき。