菊池寛「入れ札」1921
誰が親分(国定忠次)と行を共にするか、入れ札(投票)が行われる。その結果に九郎助は、己の狭量と卑小を思い知らされる。私たち一人一人の倫理はこんな時に試されるのだろう。
五味康祐「桜を斬る」1954
二人の剣豪による荒唐無稽比べ。やんや、やんや。
松本清張「佐渡流人行」1957
無理スジの心理。この男、サイコパスか。結末はご都合主義にして安ドラ。
山田風太郎「笊ノ目万兵衛門外へ」1972
あざとい場面の数々と、意味ありげなだけの鬼面人的結末。 雪の日やあれも人の子樽拾い 作者は、ただにこの一句を使いたかったのではあるまいか。
藤沢周平「麦屋町昼下がり」1987
結構はもとより、情景描写、人物造形、どれも優れていて、作者が小説の要諦を心得ているのが分かる。
池宮彰一郎「仕舞始」1993
赤穂四十七士が四十六士になった顛末仔細。テーマを前面に出しすぎている嫌いあり。一歩間違えると描写が説明に堕してしまうが、ここではギリギリセーフとしよう。
人生を変えた・・・う~ん、この程度で変わったら、人生目まぐるし過ぎて、頭パッパラパーになってしまうのでは? あえて言えば「入れ札」と「仕舞始」が、人生を考える契機にはなるかも。