コレクション日本歌人選 葛原妙子

水かぎろひしづかに立てば依らむものこの世にひとつなしと知るべし

初期から晩年まで、50首を収録。各々に川野里子の解説を付す。
葛原の短歌は五千首近くあるらしい。その内から50首というのは、いかにも少ない。注文する時から分かっていたことだが、実際に頁を繰ってみると、あらためて少ない感がつのる。

晩夏光おとろへし夕 酢は立てり一本の壜の中にて

しかも川野氏の丁寧な解説が不味い。解説に引きずられ、それ以外に読めなくなってしまいそうだ。解説は後々に読むことにして、しばらくは50首で我慢しよう。

他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水

この際、全歌集を、とも思ったが、調べてみたら古書価は10万円近い。無理。1500首を収めた選集が新刊で出ているので、それでいい。持っている第一歌集を久しぶりに読み返してもいい。